初めてラズパイを試す日がやって来たとしましょう。ラズパイとはよく聞く単語で、WindowsやmacでないLinux(リナックス)というOSが動いているらしい、くらいは知っていますが、あとは何にも知らない、けど試してみたいと、今日突然思ってしまった、のです。
本記事では、ラズパイに初めて触るみなさんに必要な知識や手順などを紹介しています。どのラズパイを買えばいいかから始まり、OSのインストールや日本語設定、そしてオフィスアプリやMinecraft、チャットAIなどのインストールや扱い方など見ていきます。
ラズパイは、小さな1枚の基板の上に必要な機能を揃えたシングルボードコンピュータ(SBC)と呼ばれるタイプに属するシリーズで、その安さもあってバージョン3や4など、大人気でした。
目次
ラズパイキットを買う
まずはラズパイの機器本体からです。ラズパイは日本での通称名で、本名はRaspberry Piといいます。最新の機器はRaspberry Pi 5で、動作するOSはRaspberry Pi OSといいます。アマゾンなどではこのPi 5を元にして必要なものをまとめたセット(キット)が売られています。
何種類か見つけることができますが、おすすめなのは下図の「Vesiri Raspberry Pi 5 Starter Kit」です。本記事執筆時点で20,000円ほどで買えます。メモリ8GBのpi 5単体で15,000円ほどするようなので、お買い得感があります。
キットの中身は左上から、
- Respberry Pi 5本体
- CPUクーラー(ファン)
- 電源アダプター
- 64GB マイクロSDカード
- ケース
左下に移って、
- HDMIケーブル2本
- USB マイクロSDカードリーダー
- ドライバー
- 使用説明書、です。
このキットをおすすめする理由は、必要なものが全部揃っていて、商品が着いたらすぐに始められるからです。Pi 5は機能が強化された分、熱を冷ますCPUクーラーや少し特殊な電源アダプターが必要なのですが、このキットには適合したものが入っていて、自分で探す必要がありません(自分で探すのは大変で、そもそも何がいいのか分かりません)。
また日本での使用にお墨付きを与える技適マークとPSEマークがちゃんとついているのも安心材料です(ない状態で使用すると法律違反)。
さらにUSB タイプAに接続できるマイクロSDカードリーダーが付属しているのもナイスです。SDカードスロットが省略されがちな最近のノートPCのユーザーにはありがたいです。
組み立て
組み立てといっても、自動車にウォッシャー液を補充するくらい簡単です。
- 下図左上赤丸内のコネクタのカバーをはずします(下図ははずした後)。ここには後で、下図右のCPUクーラー(ファン)のコネクタを挿します。
- 青い冷えピタ(サーマルパッド)3つを貼ります。両面に透明のシートが貼られているのではがして貼ります。サーマルパッドはクーラーの熱を伝え、熱くなるラズパイの部品を冷やす働きがあります。なお、(1)、(2)、(3)の位置に貼るとする解説もあります。
- スプリングのついた白いプッシュピン2本をクーラーの2つの穴に挿し、Pi 5本体の穴に挿します。プッシュピンは力を入れないとPi 5本体の裏まで届かないので、ここは少し力がいります(下図黄色の丸)。
Pi 5を冷やすにはサーマルパッドを密着させる必要があるので、プッシュピンは、その頭がPi 5本体の基板を貫通するまで、しっかり差し込みます。 - クーラーのコネクタをPi 5本体のコネクタに挿します(上図の緑枠)。
- 本体をケースに取り付けます。ねじなどの部品はケースの中に入っています。白い4つの丸ゴムは滑り止めのゴム足です。ケースの裏に貼ります。6つのねじはPi 5をケースに取り付けるためのもので、2つは予備です。黒いプラスチックはPi 5本体のオン/オフボタンに取り付けるもののようなのですが、すぐに落ちます。また黒い四角のものの用途はよく分かりませんでした。
ケーブルの接続
Pi 5本体のケースへの組み込みが終わったので、ここで各種ケーブル類との接続を見ておきます。購入したキットは全部入りなので、新たに揃える必要はありません。
下図のラズパイ右側には、白い電源アダプタをつなぎます。USB-Cタイプの接続です。その上はモニターにつなぐ黒いHDMIケーブルで、Pi 5にはHDMIの挿せるポートが2つあります。Pi 5側は小さいマイクロHDMIで、反対側は通常の大きなHDMIです。モニターのHDMIポートに挿します。
上図のラズパイ上側には、右に有線LANのケーブルを挿しています。ラズパイはWiFiが初めから使えるので、この有線ケーブルは必須ではありません。その左はUSBタイプAのポートで、キーボードやマウスなどの低速でよい機器は無印のポートに接続します。青色の速いポートには、高速でやりとりしたいSSDのケーブルなどを挿します(慣れてきたら、SDカードに替えてSSDをストレージとして使いたくなります)。
Raspberry Pi OSのダウンロードとインストール
ラズパイにはRaspberry Pi OSという専用のLinux OSが無料でインストールできます。Windowsやmac OSは有料ですが、Linux OSは無料で使えるものが多くあります。ラズパイにはマイクロSDカードの差し込み口があり、マイクロSDカードにRaspberry Pi OSをインストールすると、OSはそのマイクロSDカードから起動するようになります。
Raspberry Pi OSのダウンロードとインストールには、Raspberry Pi Imagerという専用のアプリが利用できます。これも無料です。Raspberry Pi Imagerを使うと、自分のラズパイに合った、使用したいOSを、手元のPCに接続したマイクロSDカードにインストールできます。
Raspberry Pi Imagerのダウンロードとインストール
Raspberry Pi Imagerのダウンロードとインストールは簡単で、次の手順にしたがうだけです。
- Raspberry Pi OSページにアクセスして、使っているOSにあったRaspberry Pi Imagerを、そのOS用のボタンをクリックすることでダウンロードします。
- ダウンロードしたら、ダブルクリックしてインストーラを起動し、インストールします。ただクリックしていくだけです
Raspberry Pi 5 OSのダウンロードとインストール
Raspberry Pi Imagerを使うと、ダウンロードとインストールが一気に行えます。キットに付属している64GB マイクロSDカードをUSB マイクロSDカードリーダーに挿し、PCのUSBポートに挿します。
- インストールしたRaspberry Pi Imagerを起動します。
- 各ボタンをクリックします。[デバイスを選択]には[RASPBERRY PI 5]を、[OSを選択]には[RASPBERRY PI OI (64-BIT)]を、[ストレージを選択]には、PCに接続したSDカード(リーダー)を選択して、[次へ]をクリックします。
- 設定をカスタマイズしますか? と聞いてくるので、[設定を編集する]ボタンをクリックします。
- 下に示す画面が表示されます。ホスト名にはこのラズパイ5の名前を決めて入力します。たとえば「pi5」とした場合、ネットワーク上の名前は、pi5.localになります。[WiFiを設定する]は、有線LANを使っていない場合や無線LANを使いたい場合に設定します。SSIDは接続するWiFi機器の名前で、パスワードはWiFi機器にアクセスするときに使うものです。なお[ロケールを設定する]はここで[Asia/Tokyo]を設定しても、以降の効果がないようです。
[保存]をクリックします。 - 3の画面に戻るので、今度は[はい]をクリックします。すると、下図に示す確認が表示されるので、問題ないことを確認してから[はい]をクリックします。
- ダウンロードと書き込みが行われます。終わったら確認作業が始まります。そこそこ時間がかかるので、ここでひと休みできます。
- 終わったら下図が表示されるので、[続ける]をクリックします。これでSDカードにOSがインストールできました。
ラズパイの起動
Raspberry Pi OSをインストールしたマイクロSDカードは、ラズパイケースをひっくり返した端にある下図のへこみに、向きに注意して差し込みます。
そして「ケーブルの接続」で見たように、ケーブルをつないで、間違いないことを確認したら電源アダプターをコンセントにつなぎます。
問題がなければRaspberry Pi OSが起動し、しばらくたった後、下図のようなデスクトップ画面が表示されます。
初期設定と日本語
Raspberry Pi OSはWindowsやMac OSと違って、いくつかの基本設定や日本語に関係する設定を自分で行う必要があります。このあたりは少し面倒くさい点ではあります。
OSとアプリのアップデート
Raspberry Pi OSは起動後、自動的にOSやアプリの更新データをインターネットからダウンロードします。更新ファイルは次の手順でインストールできます。
- 下図の左に示す矢印マークが表示されたら、クリックして[Show Updates]を選択します。
- [Available Updates]というボックスが現れるので、[Install]ボタンをクリックします。少し時間がかかって、Raspberry Pi OSが最新のものに更新されます。
画面の日本語化
Raspberry Pi OSの文字を日本語文字に変えたい場合は、次のようにします。
- 画面左上隅のラズベリーアイコンをクリックし、表示されるメニューから[Preference] -> [Raspberry Pi Configuration]を選択します。
- 下図に示す[Raspberry Pi Configuration]が表示されるので、右端の[Localisation]をクリックします。
- すると[Locale]が現れるので、[Language]で[ja(Japanese)]、[Character Set]で[UTF-8]を選びます。この1カ所の設定でほかのタイムゾーンやキーボード、ワイヤレスLANの国設定が自動で適切に設定されます。
- [OK]をクリックします。するとすぐ再起動するかと聞いてくるので、[Yes]をクリックし、ラズパイを再起動させます。
起動すると、画面の文字が日本語文字で表示されるようになっています。
日本語の入力
日本語が入力できるようにします。そのためには画面左上に並ぶ黒い長方形のアイコンをクリックします。これはいわゆる[ターミナル]と呼ばれるアプリで、文字を入力してOSやアプリに命令を伝えます。
ターミナルには次のコマンドを入力します。間違いがないか確認し、OKならEnterキーを押します。これは日本語入力システムの「fcitx5」と「mozc」をインストールする命令です。
sudo apt install -y fcitx5-mozc
ターミナルの中を、処理状況を示す多くの文字が流れて、止まるとインストールの終了です。日本語入力システムを有効にするために、再起動します。再起動するには、画面左上のラズベリーパイアイコンをクリックして、[ログアウト] をクリックし、[Reboot]をクリックします。
日本語が入力できるようになったことを確認するには、左上のラズベリーパイアイコンをクリックして、[アクセサリ]->[Mousepad]を選択します。Mousepadは、Windowsのメモ帳のようなテキストエディタです。
Mousepadの画面をクリックしてMousepadをアクティブにし、キーボードの[半角/全角]キーを押します。すると、画面右上のキーボードアイコンが「あ」に変わります。この状態で日本語文字が入力できます。
とりあえず本記事はここでひと段落です。休まれても明日に回しても、このまま次に進んでも結構です。
Raspberry Pi OSの終了方法
OSは次の手順で終了できます。
- 画面左上のラズベリーパイアイコンをクリックし、表示されるメニュー最下部の[ログアウト]をクリックします。
- [Shutdown options]が表示されるので、[Shutdown]ボタンをクリックします。
シャットダウンされると、電源ケーブル近くにあるラズパイ本体のLEDの色が緑から赤に変わります。これはオフの状態を示しています。
ラズパイをオンにするには、赤いLEDの左にある白いボタンを押します。キットにはこのための黒いボタンが付属しているのですが、きっちりはまらず落ちてしまいます。そこでしかたなく、クリップの先などでスイッチを突いてオンにしています。
Pi-Appsのダウンロードとインストール
ではここからは、ラズパイにインストールできるアプリを見ていきます。Raspberry Pi OSにはラズベリーパイアイコン -> [設定]から起動できる[Add/Remove Software]アプリがあります。これはアプリの追加や削除をする専用のアプリなのですが、これよりもっと分かりやすくて楽しい、Pi-Appsというアプリがあります。
Pi-Appsを使うと、Linuxのオフィス系アプリやMinecraftゲーム、最近はやりのローカルチャットAIモデルなどが簡単にインストールできるので、まずはPi-Appsをインストールしましょう。
pi-apps.ioにアクセスしてPi-Appsアプリをインストールします。アクセスするとメインのページに大きな[Install Now]ボタンがあるので、それをクリックします。すると下記のコマンドが表示されるので、一番上のダウンロードとインストールのコマンドをコピーし[ターミナル]にペーストします。
Pi-Appsのダウンロードとインストールはこれで終わりです。実に簡単。
簡単とはいえ、上記コマンドは初めてのみなさんには恐怖かもしれません。ラズパイにはちょくちょくこうしたコマンドを入力してEnterキーを押す操作が出てきます。
libreOffice
Pi-Appsは、画面右上のラズベリーパイアイコンのクリックから[アクセサリ]-[Pi-Apps]を選択することで起動できます。
[Office]という項目があるので、クリックしてみます。すると次の画面が表示され、中ほどに[LibreOffice]とあるのが分かります。これをクリックします。LibreOfficeはMicrosoft OfficeのWordやExcel、Power Pointなどに似たオフィスアプリです。これをインストールするには、右下隅の[Install]ボタンをクリックします。
Pi-Appsが使用する大きなターミナルが開いてインストールが始まります。Pi-Appsでは多くのアプリがこういった簡単な操作でインストールできます。
LibreOfficeは、ラズベリーパイアイコン下に新たにできた[オフィス]から起動できます。下図はWordに相当するWriterアプリの画面です。
Minecraft
Minecraftも同様の要領でインストールできます。アプリの名前はMinecraft Pi(Modded)です。下のビデオは、ラズパイで動かしたことを証明するへたくそなデモです。
Minecraftは「世界で最も売れたインディーゲーム」と言われる、世界中の老若男女に大人気のゲームです。ウィキペディアページや公式サイトが参考になります。
ローカルチャットAI
ここでいうローカルチャットAIは、deepseekなど、オンラインではなくユーザーの手元(ローカル)で実行できるチャットAIのモデルです。
deepseekという中国産の生成AIが注目を集めていますが、deepseekを使うと、秘密にしたいデータまで取られてしまうともいわれます。しかしローカルで扱う場合、この危険性は減ります。
Ollama GUIのインストール
Pi-AppsからOllama GUIをインストールすることで、比較的簡単に試すことができます。[Tools]から進みます。
ウィンドウ右下隅にある[install]ボタンをクリックするとインストールが始まります。少し時間がかかります。
モデルとのチャット
Ollama GUIは、ラズベリーパイアイコン->[教育・教養]から起動できます。Ollama GUIには初めからAIモデルが2つ入っていて、モデルは画面左上のメニューから選べます。下図ではphi3を選んでいます。このモデルに質問するときには、画面下部のテキストボックスに英語で入力します。右の[Send]ボタンをクリックするかEnterキーを押すと、質問が送信されます。下図では、「Hello」の声掛けにAIが何か応えています。
deepseekを入れてみる
最近話題になった中国産のdeepseekを試すこともできます。
新しいモデルを試すには、次の手順を取ります。
- 画面上の[Settings]ボタンをクリックします。
- [Model Management]が表示されるので、青字で示されているollamaサイトへのリンクをクリックします。
- ブラウザが起動してOllamaのライブラリページを開きます。deepseek-r1が上部に表示されているのが分かります。deepseek-r1をクリックします。
- deepseek-r1の個別ページに飛びます。上部左にあるメニューには[7b]が選ばれています。bというのは10億のことで、生成AIのパラメータ数というやつです。これが大きいとラズパイでは動作が難しいので、メニューをクリックして1.5bを選びます。
- するとその右のテキストボックスが、選択したパラメータ数のモデルに変わるので、右のコピーボタンをクリックしてコピーします。
- Ollama GUIの[Model Management]に戻り、上部のテキストボックスに今コピーした文字をペーストして、右の[Download]ボタンをクリックします。すると、deepseekモデル1.5b版のダウンロードが始まります。最後「Success」と表示されれば終了です。
後はメインの画面で左上のメニューからdeepseek-r1モデルを選ぶと、前のモデルと同じように下部のテキストボックスから質問できます。日本語は話せないようです。
日本産も試す
Sakana AIという日本の会社が開発している、日本語が使えるモデルも試すことができます。
[Model Management]のテキストボックスには、次の文字を入力します。
huggingface.co/SakanaAI/TinySwallow-1.5B-Instruct-GGUF
TinySwallow-1.5Bは日本語の訓練がされているモデルなので、英語や中国語でなく、日本語で話ができます。
まとめ
いかがでしたでしょう? ラズパイはごく小さな手のひらコンピュータですが、AIモデルを実行することもできます。楽しみ方はほかにもさまざまあるので、ぜひラズパイのある生活を楽しんでください。